大判例

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東京高等裁判所 昭和58年(ネ)3066号 判決

1 軍一の本件土地賃借権が建物保護ニ関スル法律一条により第三者に対抗し得るものであったことは、当事者間に争いのない前記抗弁2の(二)の事実に徴して明らかであり、貞子の右賃借権の譲受けが当時の賃貸人(地主)の蔵方に、その承諾がなくとも、対抗し得るものであったことは叙上認定説示のとおりであるが、控訴人が昭和四八年ごろ蔵方から本件土地を買受け、同年一一月一二日、その旨の所有権移転登記を経由したのに対し、貞子がそれ以前に前記賃借権と共に贈与を受けた本件土地上の本件建物について所有権取得登記を経由していないことは当事者間に争いがない。そのうえ、≪証拠≫、並びに弁論の全趣旨を総合すると、軍一、貞子は、本件建物所有権及び本件土地賃借権が軍一から貞子に譲渡されたことを前記蔵方にも控訴人にも告げたことがなく、かえって、控訴人が本件土地を蔵方から買受けるにあたり、昭和四八年一〇月一日ごろ、控訴人代表者の養母で、控訴人から本件土地賃貸借に関するすべての権限を授与されていた岩沢静子(以下「静子」という。)があらためて控訴人との間の賃貸借契約書の作成を求めた際、貞子は、軍一の指示により、静子の持参した契約書(用紙)に、本件土地の賃借人として軍一の氏名を記載し、また、後記認定のとおり静子が昭和五〇年六月ごろ及び昭和五一年七月一五日に本件土地の滞納賃料額の確認を求めた際も、軍一に代って、それぞれその時点の滞納額を確認する旨の各書面に、債務者(本件土地の賃借人)として軍一の氏名を記載し、軍一の印章を押捺したことが認められ、≪証拠≫中、この認定に反する部分ないし控訴人(静子)が前記賃借権譲渡の事実を知っていたことを趣旨とする部分は、その余の前顕各採用証拠に照らし信用できず、他に右認定に反する証拠及び控訴人が右賃借権譲渡の事実を知っていたものと認めるに足りる証拠はない。

そして、右のような事実関係、すなわち、本件土地賃借権が軍一から貞子に譲渡されたにもかかわらず、その対抗要件に相当する本件建物(地上建物)についての貞子名義の所有権取得登記が経由されていないばかりでなく、軍一及び貞子は、右譲渡当時の地主(賃貸人)の蔵方、並びにその後蔵方から地主の地位(賃貸人の地位)を承継し、本件土地につき所有権取得登記を経由した控訴人に対し、本件建物所有権及び本件土地賃借権が貞子に譲渡された旨を告げたことがなく、むしろ、地主に対しては、依然として軍一が本件土地の賃借人であるかのように振舞っていた、(したがって、控訴人は右賃借権の譲渡があったことを知る由もなかった、)という事実関係のもとにおいては、控訴人が貞子の賃借権そのものを否定し、不法占拠を理由に貞子に対し本件土地の明渡し等を求め得るかどうかはさておき、その他の法律関係については、貞子は控訴人に対し自己が賃借人である旨を自ら主張することは許されず、控訴人は従前どおり軍一を賃借人として取り扱うことができるものというべきである。

2 してみると、控訴人は、従前どおり軍一が本件土地の賃借人であることを前提として、同人に対し、賃料の請求等をすることができるものと解される<。>

(後藤 奥平 尾方)

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